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日記・仕事・回想・コラム・レビュー・レポート・小説&詩篇集/金沢のもくれん院長の気儘ブログ
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「64」を読むにあたり

横山秀夫の「 64 (ロクヨン) 」を読み始めた。初刊より数年の時を経て近々映画上映されるという。ご覧の通りの豪華なキャストだ。俳優陣と小説内の登場人物を照らし合わせつつ先ずは読んでみておいおい映画をみるのも悪くない。そんな思いで書店の平積みからこの一冊を手に取った。



横山秀夫といえば当代人気のミステリー作家である。特に直木賞の候補に上った「半落ち」は多くの読者を魅了した。この作品は刊行当時、読者の評価は高く直木賞の有力候補に上り ファンは固唾を呑んでその結果を見守った。しかし、いざ選考会の蓋を開けてみるとその評価は思いのほか芳しくなかったのである。選考委員のなかでの評価が真っ二つに分かれてしまったのだ。委員のひとり北方謙三氏の指摘する問題点が議題にあげられるとそれに同調する意見が大勢を占めるようになり、結局落選の憂き目をみることとなる。黒岩重吾氏や渡辺淳一氏のかなり辛辣な論評もあってか、横山氏は反論を試みる。同氏はミステリー界の立場を悪くするのは我慢ならないと「指摘された問題点はない」との主張をありとあらゆる媒体で展開する。しかし、直木賞側からはなんの反応も示されることはなく、業を煮やした同氏は以後、直木賞と関わりを絶つことを記者時代に世話になった地方紙紙上で宣言したのだ。

その指摘された欠点は「リアリティー」の問題だ。小説の中のどこのどの部分が現実と乖離しているかの問題はさておき、僕自身、前回のブログでも書いたように現実味のないストーリーは好まない。ただ、それは好き嫌いの問題というだけであって、「ありえない」と思うことはあっても絶対にありえないと断言できるものはないとも考える。小説に限らず全てのエンターテイメントに通ずることだが、面白いものは面白いでいいのだと思っている。つまりは直木賞がそれを拒んだだけだ。こう言うと、直木賞その母体に対して批判をしているように聞こえるがそうではない。直木賞主催者は日本文学振興のために直木賞を立ち上げた。もちろん、金も場も提供している。それが権威となって今日綿々と続いているだけのこと。選考委員は自分の責任において選考し主催者はそれに責任や義務を負う必要などない。そもそもアワードとはそういうものだ。

「半落ち」に続いて話題となった「64 」、ミステリーベストにも選ばれている。加えて、これだけの俳優陣を揃えて映画化したのだから面白くないわけがないし、今後の作品にも大いに期待が持てよう。あの選考評価におけるごたごたを経て今日選考委員の視点ももしやすると変わってきているかもしれない、そう考えると、同氏の宣言が些か早かったような気がしてならない。