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日記・仕事・回想・コラム・レビュー・レポート・小説&詩篇集/金沢のもくれん院長の気儘ブログ
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「クリーピー」を読んで

犯罪心理学の教授である高倉は、妻と二人、杉並の閑静な住宅街の一戸建てに住む。西隣には二階建てのアパートがあり、当の高倉家、東隣の西野家、そして向いの田中家、この3軒はそのアパートを隔てて孤絶した環境にあった。

ある日、その高倉に野上という男が訪ねてくる。野上は現在、警視庁捜査一課の刑事であり、高倉の高校時代の同級生でもあった。当時、そんなに仲が良かったわけではないが、同級生のよしみもあり犯罪心理学の専門家でもある高倉にある未解決事件についての考察を依頼してきたのだ。その事件とは8年前に起こった一家3人行方不明事件。たまたま家にいなかった中学生の長女は難を逃れたが、両親と長男が忽然と姿を消してしまう。現場には血痕が残されており、何者かにより暴力が行使されたことは疑う余地はない。警察の懸命な捜査にも関わらず今日まで解決には至らなかった。ところが、最近になってその残された少女が奇妙な証言をしているという。野上はその証言の真偽評価を依頼してきたのだ。高倉はその評価をまとめ、コメントを送付した。が、その直後、野上が失踪していることを知る。

そんななか、高倉の妻は西野家にまつわる異様な光景を目の当たりにし、西野家の娘が実父にアビユースを受けているのではないかとの疑念を抱く。そして田中家からも探りを入れるのだが、後にそれが仇となってしまうのだ。高倉の妻に気を許しつつあった西野の娘はついに驚くべき言葉を口にする。「あの人は本当のお父さんではない」と。。



「CREEPY」とは、身の毛もよだつような、気味の悪いという意味を持つが、まさに蛆虫が這いずっているようななんとも気味の悪い出だしだ。第一章の「隣人」では穏やかに物語が進行、逆にそれが気味の悪さを醸し出していた。第二章の「連鎖」では、大学内におけるストーカー事件に話が移行し、この先この章における恋愛沙汰がどう本筋に関わってくるのか興味が持てる一方、落ち着いた気持ちで読み進めることができた。そして第三章「仮面」、高倉はついにのっぴきならない事態に直面する。意外と早い段階で猟奇的な要素が描かれ、私たち読者をハラハラさせた。そんな印象の冒頭の三章だが、次章は次章でまた必ず別の展開が待っているのだ。なかなか秀逸なストーリー展開といえる。最後の章「幻影」でも意外な結末が待ち受けていた。この結末はミステリーとしては捻りがあり、これはこれで面白いと思うが、多少恐怖感を欠いたものになった。そう思うのは私だけか。いや、これでいいのかもしれない。身の毛もよだつ恐怖とは、得てしてそっと静かに寄り添う隣人のようなものなのだから。

これを読んで思い出したのは、4年前、明るみになった「尼崎事件」だ。主犯の角田美代子は獄中で自殺し事件は幕を閉じた。この小説の西田同様、角田は人の弱みにつけこんだり洗脳したりと、飴と鞭を使い分けるなど人心を掌握する術に長けていた。また、物語のなかの西田が西田本人でなく、自称西田であり実は矢島であったのと同様、角田は角田本人でなかったと噂されてもいる。いわゆる「背のり」という犯罪、その疑惑だ。この犯罪行為がこの一件で明るみになり公に広まることを良しとしない勢力が権力に圧をかけ容疑者自殺という形で事件をうやむやに決着させたという説もある。戦後の混乱のなかでは儘あったとも聞く。現実は小説よりクリーピーということか。。


あなたは殺人鬼。包丁を手にしている。目の前にいる人物を殺そうと包丁を振り上げた。あなたの恐ろしい形相にその人物は逃げ出し、人ひとりがやっと隠れることのできる小さな箱を見つけそのなかに身を隠す。殺人鬼のあなたは、最初その隠れ場所が分からなかった。が、とうとう隠れ場所を突き止める。殺したい人物はその小箱のなかで息を潜めている。さて、あなたはどうする?


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