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日記・仕事・回想・コラム・レビュー・レポート・小説&詩篇集/金沢のもくれん院長の気儘ブログ 【HALE OLA HOKULANI E KOMO MAI】
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理系のバレンタイン

佐竹教授が自身のツイッターのアカウントに、バレンタインデーに向けて注意喚起を促す投稿をした。 その内容は、女子学生に対してのもので若手男性教員に不用意にチョコを渡さないように釘を刺すものだった。とりわけ中高一貫の男子校から理系に行った一部の連中が「うぶすぎて」とても危ういというのだ。確かに、最難関と言われるこの大学、ここの教員になるには思春期の最も輝ける時期を勉学と研究に明け暮れる覚悟が必要だ。

教授が言うには「やばい奴」は相当にやばいらしい。女性教員は男性が圧倒的多数の状況でいろいろと慣れているが、その逆の若手男性教員のなかには中学から就職するまで母親以外の女性と話したこともないという奴までいるらしい。彼らにとって「女子とのお付き合い」とはバーチャルなゲームのなかの楽しみであり、だからこそどのようにでもその空想を膨らませることが出来る、とも言える。

一方、そんな教員がいるなかで俺の様なものもいる。建築デザインという本業のかたわら 遊び半分でやっていた趣味の領域がどういうわけか世間に認められ、そこに目を付けた学校側がよせばいいのにこの半端な俺に准教になってはくれまいかと打診してきたのだ。金に目がくらむ性質の俺がそんな依頼を断るはずもない。そんなこんなで今に至る。‟客員“という多少気楽な立場もありがたかった。

2月も第2週を過ぎて、久しぶりに授業を受け持った。講義を終えて屋外の喫煙コーナーに向かう。このところ暖かい日が続いている。今日はとりわけ草木の芽吹く匂いが香しい。冷え冷えとしたベンチに腰かけ煙草を取り出し一服する。 紫煙に心を委ねていると遠方から細身の影が近づいてきた。

「あぁ、先輩」
「おう、高野君じゃないか」

同じ学部のクラスを受け持つ若手教員の高野という男。手には可愛いい包装紙で包まれた小さなケース。 そうか、今日はバレンタインデーなのか。このときはじめて気付いた。さすがに、男子学生の割合が8割を超す教室の、男臭さが漂うなかにあってはこれも至極当然のことと言わざるを得ない。

「最近はどうだね。教壇に立つのも慣れたころではないかな」
チョコらしき携帯物には触れずに聞くも何か言いたげな様子。

「チョコ貰ったんですけど」
「ほう。それはよかった。俺にも分けてくれるなら尚更いい」

まだ何か言い足りない様子にふと察するものがあった。例のツイートか。。
「あー。あの御触れのことだね。そんなこと気にすることなんてない。食えばいい」

「三つの仮説が立てられると思うんです。第一はただの義理チョコの場合。この場合食べるべきです」

「そうだな。食えばいい」

「第二は単位狙いの場合。返すべきかも知れません」

「・・・」教員というものは、無駄に思いを巡らす職癖があるようだ。

「そして、第三の仮説です。それは本命チョコだった場合です。無論、この可能性も排除できません」
STAP細胞が一度限りの実験でみつかるほどのありえない、そんな可能性にも言及するつもりなのか。。めまいが襲う。

「その第三の仮説ですが・・・」

俺の口から突いて出たのはこの一言。
「いいから 頼む。食ってくれ」



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