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日記・仕事・回想・コラム・レビュー・レポート・小説&詩篇集/金沢のもくれん院長の気儘ブログ
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「怒り」を読む。虚構性とかリアリズムとか。

吉田修一の「怒り」を読んだ。2年程前に出された小説で、当時、世間を騒がせた事件がモチーフとなっている。今年の秋に「映画」上映される予定だ。錚々たる俳優陣が名を連ねているから、さぞかし見ごたえのある映画になることだろう。

僕が好む小説には僕なりのいくつかの楽しめる条件が備わっている。この小説はそのいくつかの点を満たしているので最後まで息切れすることなく一気に読めた。その条件のひとつは、舞台となる地方の風景や都会の街の情景がちりばめられていること。例えば、西村京太郎の小説ではその点を余すところなく伝えている。と言ったら分かるかもしれない。ある意味、旅する楽しみと同じもの。ふたつめの条件は現実的であること。フィクションとは分かっていても過度に虚構的だと読む気が失せてしまう。松本清張の小説はその点をおろそかにしてはいない。心理描写に裏打ちされたリアリズムが底流にあるのだ。3つめは、小説の醍醐味というのだろうか、人間、生き様の何たるかを描いているかだ。言うまでもなく人物描写が重要になる。それが描き切れていないと前述のリアリズムが薄れてしまう。それには適切な心理描写と合致した行動描写が求められるだろう。そして最後のひとつ。それはストーリーが面白いこと。多くの読書家はこの条件を一番に据えると思うが、僕の場合はあながちそうでもない。

あらすじについてはカスタマーレビューでもみてほしい。読むなら見るべきではないし、読む気がないなら上映を待ってもいい。ただ、映画には映像という情景描写の手段はあるが、懇切丁寧は心理描写はない。俳優の演技に期待したい。