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日記・仕事・回想・コラム・レビュー・レポート・小説&詩篇集/金沢のもくれん院長の気儘ブログ 【HALE OLA HOKULANI E KOMO MAI】
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「愛を積むひと」を観て

東京で町工場を営む篤史は、経営の厳しい工場をたたみ、心臓を患う妻良子の療養も兼ねて北海道に移り住む。終の棲家は外国人が住んでいた瀟洒な一戸建て。美瑛の広大な台地に広がる大自然のなか夫婦ふたりの第二の人生は始まった。

仕事一辺倒だったせいか篤史は越してきて以来 暇を持て余していた。その様子をみて良子は篤史に、家の周りを取り囲む石塀を造ってみてはと提案する。愛しい良子の願いならいかなることでも叶えたい篤史は、始めは渋々だったが、造園会社社長の協力のもと下働きの青年の若い力も借りることでようやく重い腰をあげる。良子の篤史へのこの提案は篤史の衰えてゆく体力や気力への配慮だったのだろう。

そんななか、自宅に空き巣が入る。空き巣と鉢合わせした良子は脳震盪で倒れ足を骨折するが、幸いにも大事には至らなかった。ホッとした篤史は再び石積みを始める。篤史と下働きの徹はもっぱら石を積み、良子は徹の中学の同級生で恋人の紗英のたっての申し出もあり、足が完治するまでの間、庭での野菜作りや調理を紗英に手伝ってもらうことにした。篤史が思い描いていた大雪山を見ながらのバーベキューも実現した。

穏やかな日々がようやくはじまりかけたその矢先、良子が他界する。良子は病状の悪化を篤史に伏せていた。うちひしがれる篤史。その彼のもとに妻からの手紙が届く。自らの命がそう長くないことを自覚していた良子がひとりになる篤史の身を案じて手紙を書き残していたのだ。紗英に託していた手紙には、不良の先輩に唆されて自分たちを裏切ってしまった徹を許してあげてほしいと、また別の手紙には不倫により他人を傷つけてしまった娘聡子を許してあげてと、良子らしい優しい思いが認められていた。。

佐藤浩市演じる篤史と樋口可南子演じる良子がまさに絵に描いたような素敵な夫婦だった。篤史が良子にナット・キング・コールのレコード盤を書棚から引っ張り出してきて針を落としてジャジーな「スマイル」を聞かせるシーン。あれはちょっと格好いいのでないの、と思ってしまった。また、良子の誕生日をお祝いするシーンだ。篤史の良子へのプレゼントは毎年決まってひと粒のパール。結婚当初、経済的に余裕のなかった篤史はネックレスを買うことが出来ず、ひと粒だけパールを贈った。それ以来、毎年ずっとひと粒のパールを贈っているのだ。その思い出を徹と紗英に聞かせる良子、照れながら小箱に入ったパールを差し出す篤史。パールは最後、ネックレスになって娘聡子に渡されるのだ。。余りに綺麗にまとまっていやしないかい。世の奥様なら、なんて素敵な夫なのでしょうと、隣の旦那を横目にしつつため息のひとつも出すに違いない -- 恰好良すぎなのだ。

しかしながら、不思議なことにこの映画、一貫して流れる綺麗すぎる出来事や登場する人物のこれまた麗しすぎる心の在り方が美瑛の大地の大らかさと美しさに完全にマッチしているのだ。夫婦の愛、親子の愛、若い男女の初々しい愛、様々な愛の形が描かれているが、初夏の北海道の雲ひとつない青空のように愛を信じている俺のような奴は、その愛があの麗しき美瑛の原景のように思えて図らずもうるうると涙することになるに違いない。自分でいってりゃ、世話ねーべ。 てか。

倦怠期に突入したお二人におすすめしたい。