カフェマグノリアへようこそ!

日記・仕事・回想・コラム・レビュー・レポート・小説&詩篇集/金沢のもくれん院長の気儘ブログ 【HALE OLA HOKULANI E KOMO MAI】
2017年10月 ≪  123456789101112131415161718192021222324252627282930 ≫ 2017年12月
TOP ≫ 八戸
TAG ≫ 八戸
      

「ライアの祈り」を観て

明るく元気な姐御肌のアラフォー女性の桃子(鈴木杏樹)と無骨で不器用なクマゴロウこと佐久間五朗(宇梶剛士)のラブストーリー。

眼鏡店の店長を務める桃子は不幸な離婚を経験し心に傷を抱えたまま人生を前に進ませる勇気を持てずにいた。ある日、後輩に誘われ渋々出かけた街コンで遺跡発掘に情熱を燃やす考古学研究員のクマゴロウと出会う。彼と出会った瞬間、不思議な感覚に捉われた桃子は、彼の語る縄文時代の話に耳を傾けるうちにその時代の暮らしぶりや生き方に関心を持つようになる。彼の仕事を手伝う桃子は発掘作業を通して遥か昔の命に思いを馳せ、そして太古から今に続く幸せのカタチを模索しはじめた。

ある日、クマゴロウは縄文時代に日本と交流があったとされるベトナムへと調査に出かける。ベトナムのある島に赴いたクマゴロウは、皆が笑って暮らせることが願いだという部族長の言葉に縄文時代のシンプルで心豊かな生き方に通じるものを感じる。彼は部族長に「人間として一番大切なものは何かですか」と問うが、その答えは皮肉にも桃子の心の傷を思い出させるものだった。


ふたりの出逢いから恋の成就に至るまでの経緯が物語の冒頭から末尾まで延々と続く。普通なら途中、食傷気味になってしまうのだが、桃子とクマゴロウのキャラクターが魅力的に描かれていて、ふたりの恋をついつい応援したくなってしまった。前半はクマゴロウが桃子を案内するする形で八戸の見所や立ち寄り処を紹介している。それについては、震災からの復興を後押しする意味も大いにあるのだろうから否定するつもりもない。むしろ、観光気分を味わえて個人的には○。

物足りない点としては、桃子の夢のシーンが度々と登場してくるが、あまり意味を成していない。桃子とクマゴロウが時空を超えて繋がっているとしたら、その辺りの部分をもう少し丁寧に描けなかったのかと思った。原作を読んで補完しなさいとでも言っているのか、それとも映画の尺の関係か、もしかすると、造りこみ過ぎて、リアルな恋愛物語がファンタジーに代わることを恐れたのかもしれない。リアルに徹する意図があったとしたら、あの夢の回想は必要ないだろう。

疑問点もある。桃子は行きつけのバーで職場の後輩桜(武田梨奈)に離婚の理由を打ち明ける。その辛い現実がクマゴロウとの恋をこれ以上進展させられない原因だと遠回しに言っていた。この世には桃子と同じ悩みを抱えながらも懸命に生きている女性は多い。女性の心理は図りかねるが、このような悩みを持つ女性ほど現実は現実と割り切り自らが気持ちを強く持たねばと思うのではないか。どうにもならないことをいつまでもグチグチ悩むものだろうか、むしろ、クマゴロウに全てを打ち明け、彼の本意を知ろうとするのではないかと思うのだ。悩みある女性の心情を本当に汲み取ったのかと疑いたくなる点が惜しい。

主役のふたりについて。鈴木杏樹は可愛さを失わない三十路の女性を上手く演じていた。宇梶剛士のオーバーアクションも全く気にならなかった。彼にとって、クマゴロウは適役だったのだろう。ふたりのキャラクターがスト-リーを引っ張っていたのは間違いない。ほのぼのとした気分に浸れる映画だった。